町田しぜんの国保育園 齊藤紘良 インタビュー

町田しぜんの国保育園 齊藤紘良 インタビュー トクマル:そもそもその頃は、お寺でイベントをやってる人もそんなにいなかったし、バチあたりなんじゃ?って思っちゃったりした(笑)紘良くんはそのお寺で育ったけど、高校は普通のところに行ってたの?

紘良:うん、近くにある都立高校に。お寺の息子なんだけど、次男だから微妙な感じ。ただ、年の離れた兄貴は早々にアメリカとかイギリスに飛んじゃって帰ってこなそうな雰囲気だから、「どうなるんだろう…」って思ってた。自分のやりたいこともあんまり言い出せなくて、「音楽が大好きだ」とかもひた隠しにして親にも言わないでいたなぁ。

保育園写真
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トクマル:ちょっとそれるけど、紘良くんは、音楽はいつ頃から始めたの?

紘良:兄貴がアメリカからCDをごっそり持って帰って来ることがあったんだけど、それでYMOとかブライアン・イーノを知ったのは大きかったね。そこから、「細野さんってどんな人だろう?」ってリサーチを自分で始めて。高校に入った時に、ちょうどWindows95が出て、その時に兄が使ってたデスクトップのPCをくれてそこでDTM(PCでの音楽制作)を始めたんだ。アンプもないし、スタジオもどう借りていいかわからない、恐いし、だから家でずっと作ってた。

トクマル:バンドはその後?

紘良:大学で最初にサークルを探してた時に、「ハワイアンサークル」を見つけて、ハワイアンすごく好きだからそこに行って熱弁してたら、「・・ごめん、うちハワイアンって名前だけどロックのサークルなんだ」って言われて(笑)。それで路頭に迷ってたらマンドリンクラブの人たちが勧誘をしてて、World Standard(注2)が好きだったから「マンドリンいいかも!」って思ったのがきっかけ。そこにSaturday Evening Postの初期メンバーがいて、割と音楽の趣味があって、そこでやってくことになった感じ。

注2:鈴木惣一朗氏のユニット。1997〜2002年頃に制作されたディスカヴァリー・アメリカ三部作や、氏が関わっていた音楽本『モンドミュージック』は当時の音楽好きを虜にした。

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トクマル:それから音楽活動を始めて僕らとも出会ったわけだ。でも、そういえばその後、お寺の修行にも行ってたよね?

紘良:2005年くらいだったかな、「(お寺は)誰が継ぐ?」みたいな話がリアルになってきたタイミングで。とりあえず僕が行っておかないと、まずお寺がなくなっちゃうから行こうと。ただ、一度海外で視察をしてみたいって気持ちもあったから、修行が終わってから奥さんと二人でイギリスに行きました。ロンドンに住んで、スウェーデンとドイツの方を回ったね。それが、すごくいい時間だったんだよね。色んなことを落ち着いて考える事もできたし、『BALLAD』(注3)も修行中にずっと考えてて具現化したし。

注3:『BALLAD』は伝承をテーマとした齊藤夫妻2人が制作している雑誌。音楽家、画家、陶芸家など様々なインタビューが掲載されている。これまでに3号が発行。

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町田しぜんの国保育園 齊藤紘良 インタビュー 紘良:修行に行く前に幼稚園(注4)で働いて、帰ってきて幼稚園より保育園の方があうかもしれないって思って、そこからどんどんのめり込んでいったんだよね。もともと教育に興味があったから教職免許もとって、中高の先生になろうかなって思った時もあったんだけど。

注4:簗田寺の裏手には『町田しぜんの国保育園』とは別に『町田自然幼稚園』もある。

トクマル:じゃあ、大学生の時は教育実習にも行ったの?

紘良:行った行った!日本史の先生やって、すっごく楽しかった。今は幼児教育やってるけど、高等教育も実感として感じられたのはすごくいい経験だった。

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トクマル:すごい人生だよね。学校の先生になろうとして勉強して、お寺の住職になろうとして勉強して、保育園の園長になって建物を作って…

紘良:でも、それをまとめてくれたのは音楽だったかもしれない。音楽を作ってる時のマインドとか、特に幼児教育って積み上げたり壊したりってことが重要だから、子供たちのマインドに移る時って物を作る時と似てる。そうすると、子供がどう考えてるかな?って自分なりの考察がしやすくて。教育と芸術が繋がっていて、そこが繋がると人生の教育というか、仏教とか宗教観みたいなものにも繋がるし。無理矢理繋げたってのもあるけど(笑)。お寺ももっと色んな可能性がある気がしてて、どうやったら人が集まってくるのか、お祭りとか法事だけじゃなくて、もっと色んな使われ方があってもいいなと思って。お寺とかちょっと閉鎖された場所を開くって感覚はずっとテーマにあるかもしれない。

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